2024年8月21日、株式会社日本TICの藤田氏とJATICの杉山副代表は、在仙台カンボジア王国名誉領事館において田井進カンボジア名誉領事と会談を行い、日本が開発した先進的な廃棄物処理技術「MCBOX」の導入について意見交換を行いました。この技術がカンボジアの持続可能な発展に与える影響について、期待と共に実際の導入課題が検討されました。
MCBOXとは:持続可能な廃棄物処理技術の革新
MCBOXは、従来の焼却炉とは異なり、有機物を分別せずに低温で熱分解することで処理を行う技術です。酸素を強力な磁力で分離し、燃焼を伴わないため、有害物質の排出を大幅に削減します。これにより、廃棄物の体積は300~400分の1にまで縮小され、副産物として炭酸カルシウムが生成されます。この炭酸カルシウムは土壌改良剤として再利用可能であり、廃棄物処理が環境負荷を軽減しながら有用資源を生み出すという革新的な仕組みです。また、運用コストは従来の焼却炉の約20%に抑えられ、メンテナンスも年1回のみで済むという経済的な利点もあります。
カンボジアにおけるMCBOXの導入可能性と課題
カンボジアは、急速な都市化と経済発展に伴い、廃棄物処理が大きな課題となっています。特に首都プノンペンや主要都市ではゴミの山が増え続け、適切な処理方法の導入が急務となっています。今回の会談では、MCBOXがカンボジアの廃棄物処理に適応できる可能性が強調されました。
カンボジアの高温かつ乾燥した環境下では、廃棄物の水分含有量が少なく、MCBOXの処理効率がさらに向上する可能性があります。処理時間は4〜5時間であり、1日2回転の処理が可能です。田井名誉領事の意見では、都市部の大規模な廃棄物処理にも、地方都市などごみ処理場が整備されていない地域において、ごみ集積所に設置するなど、安価で導入しやすい小型焼却施設のメリットを生かした導入が期待できるとのことでした。ただし、カンボジアでの導入には実証実験が不可欠であり、技術の有効性を確認するためのデモンストレーションが必要です。田井名誉領事は「カンボジアにおける現実的な導入には、まず技術を目に見える形で示し、政府や市民にその効果を理解してもらうことが重要だ」と述べました。
導入に向けた資金調達と法的枠組みの課題
会談の中で、MCBOXの導入には資金調達が大きな課題であることも議論されました。カンボジア政府や民間セクターの資金だけではなく、日本のODA(政府開発援助)やアジア開発銀行の資金活用も視野に入れるべきだとの意見が出されました。両国の利益を最大化し、持続可能な技術導入を実現する戦略的パートナーシップを構築できる可能性も議論されました。
さらに、田井名誉領事はゴミ処理には法的な整備も重要な要素だと指摘し、フン・マネット首相をはじめ、カンボジア政府高官も廃棄物処理の法制化の必要性を認識しており、廃棄物管理に関する新たな法案の策定が進行中だとのことです。このようなMCBOXなどの新技術を活用するための法的整備が急がれるが、これが整えば技術の普及は加速するだろうと述べ、カンボジアの持続可能な未来に向けた道筋が示されました。
MCBOX導入の成功事例と今後の展開
日本国内でも、MCBOXは既に複数の導入実績を持っています。大手商船会社の船舶での長期航海時の廃棄物処理、長崎の佐世保市の離島での成功実績をはじめ複数箇所で活躍しはじめています。さらに、中国では1トン処理機の量産や導入計画が進行中で、今後はカンボジアにおける製造、導入展開も視野に入れた話し合いが進められています。
結論
今回の会談を通じて、MCBOX技術がカンボジアにおける廃棄物処理の未来を切り開く鍵となることが明確になりました。田井名誉領事のリーダーシップのもと、カンボジアと日本のパートナーシップはさらに強化され、持続可能な廃棄物処理システムの構築に向けた実質的な一歩が踏み出されました。今後、デモンストレーションや実証実験を経て、MCBOXがカンボジア全土で展開される日が待ち望まれています。